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映画鑑賞「マージン・コール」(ネタバレあり)

ケヴィン・スペイシーデミ・ムーアジェレミー・アイアンズLAコンフィデンシャルのサイモン・ベイカーに、HEROESのザッカリー・クイント。豪華キャストで、サンダンス映画祭でプレミア上映され、ベルリン国際映画祭金熊賞を争ったにも関わらず、何故か日本で上映されなかった金融映画をDVDで鑑賞。

「2008年、NY・ウォール街の某投資銀行においてMBSが引き起こすサブプライム商品による金融危機」ということで、設定されているテーマの時点で、リーマン・ショックを思い出させわけだが、おそらく実話ではない(実際リーマンブラザーズは連邦破産法申請がなされたが、この会社の状況はちょっと違う)。それでも、「カネこそ全て」の投資銀行の社員が突如直面した危機とそれに対する対策と実行の過程の描き方は「カネ」という最も人間臭さを表すものを通しているだけに、面白かった。

(ここから、ネタバレ)

大量解雇の嵐が吹き荒れる中、突然解雇されてしまった某投資銀行のリスク管理部のエリックがやりかけていた「課題」が、優秀なエンジニア出身のアナリスト、ピーターの分析により解明される。その分析によると、「現在保有しているMBSが与える会社の損失は、現在の資産価値を上回る」ということだった。それを受けて取締役会は、「MBSの全売り」を決める。ケヴィン・スペイシー演じるサムは、「無価値のものを誰にも知られないように売りぬく」というその決断は、顧客や市場の信頼を失うこと明確であり、自分の信念に反すると社長に抵抗するが、結局、取締役会の決定として出された指示を部下に伝達し実行する。ただ、当然の事ながら自分もクビになると覚悟していた。しかし、それを、成し遂げたサムが上司から聞いたのは「お前は生き残った」という言葉だった。「売ることを指示した」自分の部下の多くが解雇されている中、自分だけ生き残ったことを知り、サムはいたたまれず社長に「辞める」と言う。

というところまでは、「おお男らしい!理想の上司像!」と思っていたが、、、、やっぱり、最後に「残念なことにカネがいる」と言って、辞めることを撤回してしまった。そのシーンはなんだかすごく人間という生き物の虚しさを表しており、印象的だった。

ちなみに、この映画は去年の10月にアメリカで劇場公開されたが、昨年の10月といえばまさにNYウォール街でデモが起こった時期である。この映画でウォール街デモが加熱したということもどこかの映画批評にあったが、この映画を見たあとは、そのデモをする行為自体も虚しさを感じてしまうのはなぜだろうか。

 

※番外だが、こういう危機が起こったときの対処方法の素晴らしさにはひたすら感動。ほぼ、ヒラというべきピーターの分析結果が出たのは21時だったが、飲んでいた上司をオフィスに呼び戻したのが22時。そして、取締役会が開催されるのが2時、対策案を決定するのが4時というスピードの早さ。日本の大企業なら、一社員が仮にこのようなことを発見しても、課長あたりに「本当にそうなのか?」ということを何度も確認したり、関係部門とのネゴしたり、役員幹部のスケジュール調整などで最終的にトップに伝えられるのはそれだけで1週間ぐらいかかってしまいそう。

もう一つは、取締役会に向かうときにピーターに言う役員の「説明を求められたら、隠し事はするな。」という言葉。取締役会では、社長が担当役員でなくピーター本人に問題の説明を求めるわけだが、そう言われたピーターは「売れ筋の主要商品の在庫が会社を潰す」と正直に報告する。だからこそ、それを受けて2時間後に対策案が決定できるのだ。もしかしたら、金融の世界では当たり前なのかもしれないが、問題が起きたときのこの対処プロセスの素晴らしさは本当に見習うべきところがある。


映画『マージン・コール』 - オリジナル予告編 (日本語字幕)