Google+の狙うターゲットに対する杞憂(AKB48の起用から見えるもの)

おりしも、同じ日に「Google+」に関するニュースが流れた。

「Google+」、ユーザー滞在時間が大幅に減少中か

ぐぐたす選抜で「グーグル」CMに出演!選抜メンバー発表!

Google+は、Facebookへの対抗(インターネット上の情報を全て網羅することが「使命」であるGoogleにとってFacebook内での情報は取得できないことが大きな問題であった)から、始めたSNSサービスである。試験サービス後、半年で9000万人のユーザーを獲得するなど出だしは絶好調。「サークル」というFacebookにはない概念を持ち込み、インターネット上においては、それぞれの「個人」間の関係は、フラットで透明であるべきというマーク・ザッカーバーグの哲学(宗教?)ともいえるFacebookの思想よりも、人間的だということでもてはやされ、「Facebook」よりも進んでいると言われた。また、Androidや、あらゆるサーチ、メール・マップなどのアプリなどあらゆるインターネット領域を独占しつつあるGoogleであるから、その連携をもってすれば、Facebookなど一網打尽にやっつけられるとも言われていた。私はといえば、Google+開始直後に試験サービス時に登録に成功し、早々にアカウントを取得し、周辺へInvitationを送ったりと当初はこのサービスに対する期待と脅威を持っていた。ただし、上記にもあるが、現在Google+は非常に苦戦しているのは間違いないだろう。
 
 ところで、日本ではGoogle+は、マーケティングにAKB48を積極的に採用している。AKB48に関しては、マーケティング観点で、ネット上では多くの否定的なコメントがあるが、私は一概にはそう思わない。AKB48というのは個々のメンバーに対する知名度は低くとも、やはり市場に対する影響力は大きい。何より、一般消費者に対しても「なんか盛り上がっている感」を演出するには、おそらく現在一番適当なタレントだということは理解している。
 
GoogleJapanがどう考えたかはわからないが、下記の観点でAKB48Google+に合っているとも思う。
・ブログサービス「アメブロ」でのAKB48メンバーの読者数が非常に多く、ネット上での影響力が大きい。
・彼女たちのアメブロでの投稿の多くはブログであるにも関わらず短文+写真で、1日にも数通投稿する。(一部のメンバーの1日100投稿なども話題になった。)これらは、ブログよりも、Google+のようなSNSの方が合っている。
・メンバー数が多いため、Circleの分類など、ユーザから見てGoogle+の新機能を使うきっかけになる。
 
一方、AKB48側のメリットも多い。
 ・「会いにいけるアイドル」というコンセプトにも関わらず、多忙を極め劇場での公演ができない状況で、コアなファン層を維持し続けることが困難になりつつあったため、ファンの日常生活の中に入り込むことにより、コミュニケーションをより密接にすることができる。
・テレビに露出する一部の人気メンバー以外のメンバー側にチャンスが与えられることにより、全体の底上げを図ることができる。
秋元康自身も参加することで、ファンからの要望など吸収する&ファンが参加しているという思いになることができる。
 
これらのニーズにあったことからこそ、日本ではAKBファンを中心にGoogle+ユーザーが増えているといわれているし、この中から出てきた「ぐぐたす」という言葉も少しながら浸透してきている。そして、上記の「ぐぐたす選抜」なるものが登場するなど、「AKB48界隈では」盛り上がっている。(ちなみに、このぐぐたす選抜に選ばれた一部のメンバーは自作の動画の投稿なども使いこなし、Google+の機能を思う存分に使いこなしている。)また、秋元康自身が「ぐぐたす」のことを、「初期AKBの時に聴けていたファンからの直接の声を、いまや大きくなりすぎた現在でもリアルに聞くことができる重要なツール」とどこかで言っていたが、AKB48以外にも沢山のアイドルが登場し、その地位を奪おうとしている状況にある中、非常に重要なマーケティングツールになっていることだろう。もちろんこれはファンにとっても同様で、メンバーとの接点という観点でも、AKBのファン及びAKBにとってはGoogle+というのは非常に良いツールになっているのだ。あなたの周りにAKBのファンがいたら聴いて欲しい。おそらく、「ぐぐたす」の重要性について語ってくれるだろう。
 
一方で、一般ユーザの声として、下記のようなものがあがっている。「タイムラインがAKB48のメンバーで占められてしまっていて、とても通常のコミュニケーションツールとしては成り立たない」「知らない間に、サークルがAKBだらけになっていた」などなど。AKBファン以外からは、このAKB48の起用については、よいマーケティングと捉えられていないようにも見える。(私もそのように思っていた。)
 
実は、ソーシャルメディアにとって、芸能人などのセレブリティの取り込みというのはマーケティング上大きな意味を持つ。例えば、Tumblrは、他のソーシャルメディアと比べて、アーティストや自己表現者のための色が強いが、それにあった芸能人の利用というのが目立つ。例えばレディ・ガガなどだ。これによって、彼らのファンを取り込み、「Tumblr=Cool」というイメージを作っている。このイメージや色というのは、ソーシャルメディアのポジショニングにとって重要だ。Pinterestのユーザーの多くは女性であるそうだが、このように、巨人となったFacebookに対して、Facebookにはない価値を提供することを考えると、取り込むべきユーザーのターゲティングは非常に重要になる。そして、芸能人に利用してもらうということは、マーケティングとして、取り込むべきユーザターゲットと密接に関わる。つまり、Google+はAKB48を起用することにより、特定のユーザー層を獲得しようとしているのだ。
 
AKB48のターゲット層において、所謂アイドルファンとしてのコアユーザー以外でコアになる層。それは、中高大学生などの若年層だ。(サラリーマンなどもあげられるがそれほど、前者に比べて強い結びつきを求めるということはない。)つまり、G+がFacebookへの対抗として、獲得しようとしている層は、Google+は若年層なのだということが言える。
 
実は面白いことにGoogle+のターゲットユーザに関して面白い記事がある。世界的に見ると、Google+のユーザーは、「恋人のいない男子学生」が多いということである。これはまさに、AKB48のターゲット層とも近いのだ。
 
GoogleにとってGoogle+というのは単なるSNSではなく、検索サービスの高度化のために必須である」、米国Googleの広告事業部門上級副社長であるスーザン・ウォジッキ氏が言っているが、その意味でGoogleにとってGoogle+というのは「絶対に失敗できない」存在であることは間違いない。その点では、「恋人のいない男子学生」だけに使われるサービスではいけないはずだし(そもそも、本当にGoogleJapanがこの層をターゲティングして狙っているかの確証はない。)、最終的にはGoogleを利用する全ユーザーの行動データを取得する必要がある。
 
ここから、どのようにユーザーを広げていくのか?はたまた「AKB48の生活を見るためのツール」で終わるのか?非常に興味深い。